学校蔵に新入生としてやって来た「モロミ君」。
まずはもろみの「声」を届けることからスタートする。
尾畑酒造では、NTT東日本(東日本電信電話株式会社)とのコラボレーションにより、酒造りのサポートをする酒蔵センシングとコミュニケーションロボットを試験的に導入しました。今後、もろみ温度の管理やデータ分析、酒知識の蓄積を進め、酒を専門とする酒蔵ロボットとして育成していきます。
学校蔵に新入生としてやって来た「モロミ君」。
まずはもろみの「声」を届けることからスタートする。
愛称は「モロミ君」。正式名称はNTT東日本の「ロボコネクト」。2017年7月に、尾畑酒造の第2蔵となる学校蔵にやって来ました。同月、学校蔵の仕込みタンクにNTT東日本が開発中の「酒蔵センシング」を設置し、もろみ温度および麹室の温度と湿度の計測を開始。センサーと通信技術を使い、離れた場所にいるロボコネクト「モロミ君」が、それらの計測値を伝えます。これらの計測値は酒の仕込み状況を判断する大切なポイント。通常は一日数回実施される温度確認の継続的な監視が可能となり、状況変化について「モロミ君」やスマホで確認することができます。得られる精度の高い情報を、より美味しい酒造りに活かすことを目的としています。また、今後「モロミ君」に酒の基礎知識をインプットしていき、酒に関する質問に答えられるようにしていく予定です。日本酒は難しく敷居が高いお酒と思われていることが多いですが、将来は日本酒ファンに親しみやすく、酒に関するコミュニケーションが出来る存在になれば幸いです。
現在は試験的導入段階であり、もろみセンサー、麹室センサー、モロミ君ともに今後改良を重ねてまいります。
2017年の学校蔵での酒造りは5月中旬より始まりました。タンク4本を夏の間に仕込むのですが、その第一号のタンクをNTT東日本とコラボレーションすることになりました。目指すのは香り豊かで旨みのあるお酒。その過程において、酒造りという伝統的なものづくりとICT(Information and Communication Technology=「情報通信技術」)の新しい関係を考えるきっかけが生まれました。
酒造りには「一、麹。二、もと。三、造り(もろみ)」という言葉があります。麹やもろみは日本酒の最終品質に関わる大切な工程。麹室では蒸した米のデンプンを麹菌により糖に分解します。「もろみ」は酒母に三段仕込みと呼ばれる方法で、麹、水、蒸し米をそれぞれ3回に分けて加えていきます。この時に大切になるのが品温です。温度で発酵の進行具合を判断し、コントロールしていくのです。一般的には、一日に数回計測し、記録しています。
酒を造る杜氏の技は、一見、勘やセンスによると見えるかもしれません。しかし、実際には経験で得たデータの蓄積の裏付けがあってこその判断が決め手です。センサーを作って継続的なデータを取ることによって、より正確な状況変化を把握することが出来ます。また、遠隔地に杜氏がいても、状況変化がわかることにより、適切な判断が可能となります。緻密なデータはさらに高品質なお酒を生むことに大きな役割を果たすのです。
学校蔵はオール佐渡産の酒造りを目指しています。米や水はもちろんのこと、酒造りのエネルギーも太陽光パネルを設置し、理論上、必要電力の100%を自然再生エネルギーでまかなっています(東京大学サステイナビリティ学連携研究機構との共同研究)。
今後はテクノロジーを活用してエネルギーの最適化を図り、さらなる地域持続型ものづくりを目指してまいります。