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色白美人の旬 [蔵元寄り道日記] 入力者: 尾畑留美子
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| 佐渡の山菜の季節となりました。 特にうちの蔵では今まさに「山ウド」が旬であります。 この山ウドは、おが屑で覆われて育った箱入れ娘。 出来たウドは柔らかくて白い、まさに「色白美人」なのでございます。
今日もたくさん出てきた色白美人の山ウドちゃん。 酢の物でまずはあっさりと、そして知人に頂いたやはり採れたての 大きな生シイタケと炒めものに、さらには軽くボイルした山ウドにポーチドエッグを乗せてまったりと。 色白の山ウド美人さんは、和に洋に大活躍してくれます。
なぜ山ウドなのか??
実は山ウドはうちの奈良漬けのおいしい素材なのです。 メインは瓜ときゅうりなのですが、数年前から山ウドの奈良漬けを 始めました。 そしたら、この野性的な苦味がなんとも言えない風味を醸し出して 日本酒にぴったり。 春ならではの渋みとでもいいましょうか。それがひと手間掛ける ことによって、春ならではの自然の息吹を感じさせてくれるのです。 そんな山菜の魅力にみせられて、奈良漬けはもちろんながら、 採れたての山ウドもおいしく頂くようになりました。
実は、もう一品お勧めがあります。それはうちの奈良漬け用の酒粕に 数日間漬け込んだ浅漬けの粕漬け。歯ごたえもあって、野性味もたっぷりで、特製の付け粕さえあれば、いろんな野菜を漬け込むだけで完成する田舎の逸品です。
今日の食卓は山ウドづくし。でも、前菜からメインまで、ちゃ〜んと活躍してくれている色白美人の山ウドです。
合わせるお酒は、やっぱり味わい深く、山ウドの野性味にも負けない無調整原種の純米吟醸「真野鶴・自然酒」からスタートがおすすめ。 そして暖かいお料理が始まる頃には優しい味わいの「真野鶴・壱穂」のお燗を頂きます。柔らかく膨らむお燗酒の風味が、山ウドの野生味をほぐしながら体に優しい旬の味わいを引き出します。
色白美人には、少し力強く、でも優しく包み込むお酒が合うようです。
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イタリアンと日本酒 [蔵元寄り道日記] 入力者: 尾畑留美子
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昨日今日と、暖かい陽気に包まれた新潟でした。 その陽気に誘われて昨夜は友人4人でイタリアンを食べにお出かけ。 村上牛のカルパッチョ、4種のチーズのパン・グラタン、 カラスミのスパゲッティ、肉厚しいたけのソテー等々、 次から次へとオーダーはとどまることを知りません。 そしてテーブルに運ばれてくるオリーブの香ばしい香りとともに、 ちょうど良い具合に冷やしてもらったお酒が運ばれてきました。
今回、用意したのは「真野鶴・純米吟醸原酒・自然酒」。 お米の持つ甘味、酸味、うま味がギュッと詰まったこのお酒は、 クリームやビターな味わいも感じさせて存在感もたっぷりです。 たっぷりした厚手の器に注いでイタリアンと共に飲む一献。 お酒が持っている酸味がチーズにも合い、とっても絶妙な組み合わせであります。
「日本酒って、イタリアンにも合うでしょう」とばかりに 得意顔にしているお酒を囲んで、私たちの日本酒談義とともに イタリアンのおいしい夜は更けていったのでした。 満腹!(^^)!
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搾ったお酒の火入れ作業 [佐渡の蔵元日記] 入力者: 尾畑留美子
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| 次々に新しいお酒が生まれてきました。 搾ったお酒は「生酒」ですが、この生酒には酵素がまだ生きています。
この「生酒」をそのまま冷蔵室や氷点下貯蔵で取っておくものもありますが、多くは通常「火入れ」という作業に移り、お酒をタンクごとおよそ65度にまで熱殺菌します。
蔵の作業場が活気を帯びて、朝から蔵の中がお酒の香りとともにもうもうと白煙に包まれる幻想的な風景が見られる時期なのです。
この「火入れ」作業の目的は大きく二つあります。 一つは生酒の状態ではまだ生きている酵素の働きを止めることによって発酵を止め、安定した酒質を保つため。 二つ目は、「火落ち」からお酒を守るためです。これは「火落ち菌」と呼ばれる乳酸菌の一種なのですが、昔は腐造の元になるとして恐れられたものです。 今は冷蔵設備の整った蔵での仕込みや、流通の向上などより腐造のリスクは激減していますが、それに加え、防腐剤などではなく熱殺菌という作業を経ることによって、お酒の品質を保つのです。
ところで、通常の日本酒は2回火入れをします。 (前述したように、生のままで貯蔵されるものもあります) 一回目は、今の時期、タンクごとにされるものです。 そして二回目は、瓶詰めの際にされるものです。
火入れを一回だけ、というお酒も存在します。 最初は火入れせずに、瓶詰め作業の時だけに火入れするものを「生貯蔵酒」、逆に搾った後にタンクで火入れしてそのまま夏を蔵で越し、秋口に火入れすることなく出荷するものを「冷やおろし」と呼んだりもします。
同じお酒でも、生まれたての「生生」の時から、そのまま生で保管されたもの、あるいは火入れされたもの、それも火入れのタイミングや保管方法によって、どんどんお酒の成長具合や表情が変わっていきます。
言いかえれば、「火入れ」という作業一つがお酒の成長に大きな影響を及ぼす。 杜氏も蔵人もとても真剣な表情なのです。
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真野公園の桜 [蔵元寄り道日記] 入力者: 尾畑留美子
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| 今日の佐渡の桜です。 まだ蕾のものもありますが、うすい桜色がとても清々しい風景です。 ここは、うちの蔵からすぐそばにある真野公園の桜。 とてもきれいでしょう! ちょうど今は夜桜を楽しむツアーもあって、皆さんに喜んで もらっています。
佐渡の桜はまだ五分咲きから七分咲きといったところですが、 先週の東京の桜は満開でしたね。 たまたま夜桜を見る機会に恵まれたのですが、川べりに照らされた桜の姿がとても妖艶でした。
佐渡の桜は今週末が満開でしょうか。 もうすぐ公園の山も一面桜色に染まります。
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ツバメの来蔵 [蔵元寄り道日記] 入力者: 尾畑留美子
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| 昨日は花冷えを通り越して突風に見舞われた佐渡が島でしたが、 今日は一転、春の陽気に包まれております。
そんな陽気に誘われたように、今朝、ツバメのカップル第一号が 今年もうちの蔵にやってきました!
ツバメたちは朝早くから、蔵の玄関が開くのを待っていたらしく、 扉が開いた瞬間、二匹です〜っと入ってきました。 今もいつもの場所で、でも今年の居心地を確かめるように 二匹で声を掛け合いながら飛び回っています。
例年、うちの蔵にはいくつもツバメたちが巣を造るのですが、 赤ちゃんが生まれて、雛たちが大きくなって無事に巣立つまで、 いつも大事に見守っています。 ツバメはこの蔵の大事な家族の一員なのです。
ツバメたちがやって来ると、蔵にも溢れんばかりの生命力が 漲ってきます。
今年もツバメとともに、佐渡の春、そして蔵の春が始まるのです。
●「ツバメの到来」(NHK新潟ラジオ「朝の随想」2006.4.20より)
早朝の道に新入学生たちの声がこだまする季節になりました。 空ではツバメが澄んだ声を響かせながら、自分たちの住居を求めてやってきます。 4月4日、そのツバメが蔵にやってきました。 今年の第一号ツバメは昨年より二日早く到来しました。 最初一羽だったツバメは、数日後にパートナーを連れて 帰ってきました。 蔵には至るところにツバメの巣があり、毎年たくさんのツガイが やってきます。 まず取り掛かるのが古巣の補強ですが、以前はワラなどだったのが、 最近はビニールのひもが混じっているのもリフォームの近代化、と 苦笑い。
巣が完成し産卵からしばらくすると、小さなさえずり声が あちらこちらで聞こえ始めます。 雛たちの誕生です。 一列に並んで口ばしを大きく開けて親ツバメを待つ姿は、 愛嬌たっぷりです。
もっとも、雛ツバメの成長も順風満帆とばかりにはいきません。 雛ツバメが巣から落ちてヨタヨタ歩いている、というのは よくあります。蛇がツバメの巣を狙っていた、ということも ありました。こういう時はあの手この手でツバメ親子を保護し、 無事に巣立つまで見守っていきます。
しかしながら、たまには予測できない事故も起こります。 先日、勢いよく飛び回っていたツバメたちが正面衝突し、 一羽が地面に落ちてしまいました。 おそるおそる近づくと、仰向けに倒れて目を開けたまま、 手足がピクピク動いています。 これは、人間でいうところの「脳震盪」なのかな・・・と思いながら、 そっと手を伸ばした瞬間、突然 「ピピピ!」 と、一直線に元気に飛び立ちました。 でも、向かった先にはすでに二羽のツバメが飛びまわっています。 三羽のツバメがくるくると輪を描きながら追いかけっこを始めました。 どうも、つがいに一羽が邪魔をしているようです。 先ほどの墜落も、ツバメたちの空中戦での出来事だったのでしょう。 どのツバメが邪魔しているのかはわかりませんが、 しばらくたつと、一羽が去り、ツガイが残って平和が戻りました。
アクシデントにも負けず、ツバメの夫婦は巣のリフォームを再開し、 産卵に備えます。翌日には新しいツガイもやって来て、家の中は 心地よい鳴き声で溢れています。
「ツバメが来る家は縁起がいい」という言い伝えがあります。 根拠はありませんが、ツバメたちが元気な姿でやって来ると、 一緒に幸せを運んでくれているように感じます。
今年もたくさんの雛を頑張って育てて、元気に旅立ってほしいと 願っています。
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