蔵元日記

 
  2010年11月02日 (火)
外国特派員協会の皆さまと老舗の旅 [佐渡の蔵元日記]  入力者: 尾畑留美子
昨日今日と、日本外国特派員協会より8名の方が佐渡にお越し下さいました。

ほとんどの方が、佐渡初体験。

そんな中、今日の午後は当社の酒米を造って下さっているとっても素敵な相田さん父子にご協力頂き、お米のお話、そしてお酒のお話をさせて頂きました。

お食事やセミナーの時間を通して、京都文化と佐渡文化との共通点や、京都の老舗と酒蔵という伝統産業の共通点などにもお話が広がり、協会の方々の幅広い知識に聞き入るばかり。

特に、ある方がおっしゃった、“老舗のベンチャー”という言葉は興味深かったです。

“老舗”と言われる伝統産業で酒造りに携わっていますが、新しいことにチャレンジしていく蔵元も多いです。

そうすることによって「伝統をつなげていく」という術を、老舗業界に生きる者は本能的に身につけているのかもしれませんね。

海外というフィルターを通すことによって見える、日本の老舗業界の共通点。

新しい視点を頂き、感謝感謝なのでありました。

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  2010年11月01日 (月)
お酒の「匂い」が呼び起こすもの [佐渡の蔵元日記]  入力者: 尾畑留美子
11月に入りました。
お酒造りも順調です。

造りが始まると、蔵の空気が変わります。
独特の香りに包まれるのです。

そんな香りをお届けしたく、以前書いたエッセーをご紹介いたします。
●お酒の「匂い」が呼び起こすもの●

「うわ〜!すごいお酒の匂いだね」
蔵に一歩入った途端、初めて訪れる人は大抵そう言う。
ここで言う「お酒の匂い」とは、醸す”現場ならではの生きた匂いとでもいおうか、
蔵にしかない匂いだ。
お酒の弱い御仁などは一歩入った途端に酔ってしまうというから結構強い匂いなのだろうが、私は生まれた時からこの匂いに包まれて育ったので、ふるさとの香りのようになっている。

一言で「お酒の匂い」と言っても酒造りのおりおりの過程で得られるそれは千差万別だ。
例えば、酒米の蒸しあがった匂いはコシヒカリの新米を炊き上げたふっくらした印象というよりも、もっと粘性を感じるモチ米を蒸した匂いに近い。
麹米と呼ばれる蒸した米に麹菌を振りかけて出来るポロポロした米は、ほっこりした栗のような香り。
タンクで発酵中の酒は、蔵全体を覆い尽くさんばかりのお米の甘みやミルクのようなまろやかさを感じる香り。
そして搾ったばかりの生酒はガキ大将のような勢いと主張のある香り。
それが熟成するにつれてまろみが増していき、立派な紳士や淑女のような落着きと奥深さを感じさせていく。
そのまま十年もたって秘蔵古酒に成長すると、いぶし銀の魅力をまとい、まるでシェリーのような香りを発する。
本をただせばお米から生まれた液体がかくも華麗な七変化を遂げるとは、なんと日本の酒の神秘的なることか。

日本酒はお米のデンプンを麹菌が糖に変え、その糖を同時進行で酵母がアルコール発酵させて出来る。
この発酵は「並行複発酵」と呼ばれ、複雑で不思議な醸造微生物の働きがある。
よく海外に行くと「なぜ米が原料なのに洋ナシやバナナ、メロンなどフルーツの香りが出るのか?」と聞かれるほどだが、これは日本人が長い年月をかけて作り上げてきた誇るべき発酵文化の賜物なのである。

ところで、「匂い」は人の記憶と密接にかかわっているらしい(プルースト現象と呼ばれている)。
きっと多くの人は、特別なお酒の匂いに触れると、大切な人と酌み交わした素敵な思い出がよみがえるに違いない。
日本酒のある風景には、そんな思い出がふさわしい。
その一方で日本酒離れが進んでいるのは悲しいことだ。

日々接している日常のものは徐々に感動やありがたみが薄れ、実はそれがいかに素晴らしいものであったかを忘れがちなものである。
国内における日本酒もそうした感が強い。
しかしながら、ニューヨークでパリでロンドンで、繊細な和食に舌鼓を打ち、日本酒を傾けながら感嘆の声を上げる多くの外国人の姿を見ると、われわれの文化がいかに素晴らしいものであったかを再認識できる。

寒さと静寂の中で凛と構える蔵の中に入り、大きく深呼吸してみる。
体全体に「お酒の匂い」が染み入ってくる。
四季の移ろいとともに日々変わっていくこの「匂い」を感じ、
それを伝えていくことが出来れば、
日本酒の未来は明るいと信じている。

(新潟日報社発行「新潟文化」に寄せたエッセーより)

*写真は麹米(撮影:Kazuko Wakayama)


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  2010年10月28日 (木)
連合三田会(2) [佐渡の蔵元日記]  入力者: 尾畑留美子
10月24日に慶応大学日吉校舎で開催された連合三田会のご報告の続きを・・・。

連合三田会とは、慶応大学の卒業生が年に一度集うイベントなのですが、昨年、このイベントの一環で「塾生蔵元大集結」のコーナーが設けられました。

仕掛け人は、以前この蔵元日記でもご紹介した120美酒会の皆さま。
日本酒をこよなく愛し、強力な日本酒応援団である美酒会の方々がちょうど幹事年度にあたり、全国の三田OB蔵元にお声を掛けて下さったのです。

初挑戦だったにも拘わらず、気配りのきいた準備のおかげで当日は大盛況。
私もだいぶご無沙汰していたゼミやサークルの先輩に思いがけずばったり会ったりで、美酒会の皆さまの思いの一つ、「お酒がつなぐ慶応の縁」に感謝感謝の気持ちでありました。

そして今年。

昨年より少し増えて22の蔵元が全国から集結しました。

酒造組合やイベントでご一緒している蔵元さんもいらっしゃるし、はじめてお会いする蔵元さんも。
それはそれで楽しいですね!
自分のブースに張り付いていて、他のお酒が飲めなかったことだけが心残りでございますが・・・。

写真は蔵元集結コーナーの様子です。
なかなか盛況なのです。
こうやってお酒を囲んで旧友と語り合うっていいですね(^^)。

今年の幹事さんの皆さまにも一年前からあれこれとお世話になりました。
ありがとうございました。
当日、お声を掛けて下さった諸先輩の皆さま方にもこの場を借りて
深くお礼申しあげます!

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  2010年10月27日 (水)
大学生に望むこと [佐渡の蔵元日記]  入力者: 尾畑留美子
先日の新潟県立大学のシンポジウムに先立ち、同大学の学生168名に向けて講演をさせて頂きました。

テーマは「地域環境学」。

私は日本酒の蔵元なので、やはりお酒と地域の関係、そしてお酒の元であるお米のお話が中心になります。

そのお話と同じくらいに伝えたかったのは、
大学生の皆さんの今だから出来ること”。

講演の一番最後に、ある一つの質問を投げかけました。

この問いに「はい」と答えた学生さんはほんの数人でした。

それはさておき。

 (というか、質問自体を言わなきゃ、わかんないですよねぇ。
  でも内緒(-_-)すみません・・・)

学生さんには沢山いろんなことに挑戦して欲しいですね。

失敗してもやり直す時間がいっぱいあるのですから。
転んでも立ち上がる体力があるのですから。
恥をかいても笑い話にしてくれる友人たちがいるのだから。
(しかも、この時期の友人は一生ものです)

やはり大人になっていくと、なるべく成功率を上げたい(笑)。
だから少ないながらも知恵を使うし、経験も生かさなくては、と考えます。
もちろん仕事もあるし、結果も出さなくちゃと。

逆に言うと、学生の身分は「何者でもない自分」。
肩書きに左右されることなく、一人の人間として向かっていける貴重な時代です。

って、偉そうに言える自分ではないな・・・とハタと気づき赤面中です(恥)。
ごめんなさい。相変わらず悪戦苦闘中です。楽しいけど。

いくつになっても「挑戦する」気持ちを持っている人は魅力があります。

その潜在能力がより自由なうちに、いろんなことにチャレンジして欲しいですね。

そ。ぜひ日本酒にもチャレンジね(^^)。


●参考エッセー「未来への浪漫」

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  2010年10月26日 (火)
違う世界への扉 [佐渡の蔵元日記]  入力者: 尾畑留美子
羽田国際航空に行ってまいりました。

好きなんですよね。空港。

いるだけで、ワクワクドキドキしてしまいます(笑)。

映画館、空港、図書館、そして蔵。

私には、みんな違う世界への扉です。

時空を超えて、見知らぬ世界へ。

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